夏になると、地元がちょっと恋しくなる。~夏休みの思い出をたどると、地域の教育が見えてきた~

夏になると、地元がちょっと恋しくなる。~夏休みの思い出をたどると、地域の教育が見えてきた~

夏休みの思い出をたどると、地域の教育が見えてきた。

夏になると、地元がちょっと恋しくなる。

私は、地元・仙台にいる友達のSNSを見ると、特にそう思います。

夏になると、仙台の街の写真が増えてきます。

そう、仙台七夕です。

(写真ー仙台七夕まつり協賛会)

色鮮やかな吹き流しが並んだアーケード。

たくさんの人でにぎわう街。

友達が投稿した写真を眺めていると、

「今年も七夕の季節か~」

なんて思う。

そして、しばらくすると、

「あー、仙台帰りたいな」

となる。

不思議ですよね。

仙台にいた頃は、七夕があることなんて当たり前でした。

わざわざ「仙台七夕を見に行こう!」と予定を立てなくても、街を歩けば大きな七夕飾りが目に入る。

友達と一緒に歩いたり、買い物をしたり。

それだけ。

でも、地元を離れてみると、その「当たり前」が急に恋しくなる。

SNSに写っているのは七夕の写真なのに、

「この辺、昔よく行ったな」
「ここで友達と待ち合わせしたな」
「夏休み、何してたっけ」

と、昔の記憶まで一緒に思い出してくる。

そこで気づきました。

地元が恋しいって、地元そのものが恋しいだけじゃない。

その場所で過ごした時間が恋しいんだ。


あなたの「夏の思い出」は何ですか?

みなさんにも、ありませんか?

夏になると思い出す場所。

毎年楽しみにしていたお祭り。

友達と遊んだ公園。

家族と出かけた場所。

学校の帰り道。

「夏休みといえば、これ!」

という思い出が、きっと一つくらいあるのではないでしょうか。

子どもの頃は、それが特別なことだなんて思いません。

友達と遊ぶ。

学校に行く。

部活をする。

地域のお祭りに行く。

家族と出かける。

ただ、それだけ。

でも、何年も経ってから振り返ると、

「あの頃、楽しかったな」

と思う。

そして、その思い出があるから、

「久しぶりに地元に帰りたいな」

と思える。

私たちが「ふるさと」と呼んでいるものって、もしかしたら、こういう小さな思い出の集まりなのかもしれません。


では、今の子どもたちは?

ここで、少しだけ考えてみたいことがあります。

私たちが子どもの頃に過ごしていた地域と、今の地域。

同じでしょうか?

もちろん、変わっているところもあります。

子どもの数が減った。

近所で遊ぶ子どもが少なくなった。

地域のお祭りを続けることが難しくなった。

そして、学校も変わってきています。

地方では、少子化によって学校の統合や高校の存続が課題になっている地域がたくさんあります。

「高校がなくなる」と聞くと、

「高校生が遠くまで通わなければいけなくなる」

というイメージがあるかもしれません。

もちろん、それも大きな問題です。

でも、高校がなくなることで失われるものは、それだけではありません。

高校生が地域にいる時間。

地域の人と高校生が関わる機会。

高校生が地域の行事に参加する機会。

そして何より、

「この町で高校生活を送った」という思い出。

高校がなくなるということは、子どもたちが地域で過ごす大切な3年間を失うことにもつながります。

高校時代に友達と歩いた道。

放課後に立ち寄ったお店。

地域の人と一緒に参加したお祭り。

町の人に応援してもらった部活動。

高校生だからこそできた地域での経験。

こうしたものも、将来振り返ったときには、きっと大切な「地元の思い出」になります。

だからこそ、高校を残すことは、学校を一つ残すことだけではありません。

その地域で子どもたちが学び、成長し、思い出をつくる場所を残すことでもあるのです。


「高校がある町」から「この高校に行きたい町」へ

では、どうすれば地域の高校を残していけるのでしょうか。

ただ「高校を残そう」と言うだけでは、生徒数を増やすことはできません。

大切なのは、

「この地域だから、この高校に行きたい」

と思ってもらえる学校をつくることです。

そこで行われているのが、高校魅力化です。

高校魅力化というと、学校の設備を新しくしたり、特色のある授業を増やしたりすることをイメージするかもしれません。

もちろん、それも一つです。

でも、本当に大切なのは、

「この学校でどんな3年間を過ごせるのか」

を地域全体で考えることだと思います。

地域の仕事を知る。

地域の課題について考える。

地域の大人から話を聞く。

地域の行事に参加する。

学校の中だけではできない経験を、地域の中でつくっていく。

そうすることで、

「高校に通うためにこの町にいる」のではなく、「この町だから、この高校に通いたい」

という魅力が生まれていきます。

そして、もう一つ重要なのが、高校生が安心して学べる環境をつくることです。


公営塾は「高校生のための塾」だけではない

ここで、私たちみらいくが取り組んでいる公営塾について紹介したいと思います。

公営塾とは、自治体が設置し、民間企業などが運営する地域の学習支援の場です。

一般的な学習塾と大きく違うのは、「地域の教育を支える」という目的を持っていることです。

私たちみらいくは、自治体と連携し、地域の高校生一人ひとりの目標に合わせて学習をサポートしています。

大学進学を目指す生徒。

公務員を目指す生徒。

短大や専門学校への進学を目指す生徒。

目標は、一人ひとり違います。

だから、全員に同じ授業をするのではなく、それぞれの学力や目標に合わせた個別指導を行います。

学校の授業内容も確認しながら、

「今、学校で何を学んでいるのか」

「その先にどんな進路を目指しているのか」

を把握し、一人ひとりに合った学習を支えていきます。

映像授業なども活用しながら、必要な部分は講師が個別にサポートする。

「学校の授業についていけるようになりたい」

という生徒にも、

「大学進学に向けてもっと勉強したい」

という生徒にも対応できる環境をつくっています。

でも、公営塾の役割は勉強を教えることだけではありません。


公営塾が、高校の存続を支える理由

地域に高校があっても、

「進学したいけど、十分な学習環境がない」

「大学進学を目指すには、地域の外へ行かなければならない」

となれば、子どもたちは高校選びの段階で地域の外へ出てしまうかもしれません。

だからこそ、地域の中で安心して学べる環境をつくることが重要です。

公営塾があることで、

「地元の高校に通いながら、自分の目標に向かって勉強できる」

という選択肢をつくることができます。

そして、それは高校の魅力にもつながります。

「この高校には、公営塾がある」

「学校だけでなく、地域全体で勉強を支えてくれる」

「自分の進路に合わせて学べる環境がある」

こうした環境があることは、地域の高校を選ぶ理由の一つになります。

つまり、公営塾は単に「勉強を教える場所」ではありません。

高校に通う生徒を支え、高校の魅力を高め、地域の高校を未来につなげていくための場所でもあるのです。

私たちみらいくが公営塾を運営する理由も、そこにあります。


10年後、20年後にも「帰りたい」と思える町へ

今年の夏、地元に帰る予定はありますか?

もし帰るなら、ちょっとだけ昔のことを思い出してみてください。

子どもの頃によく遊んだ場所。

毎年行っていたお祭り。

学校までの通学路。

友達と過ごした時間。

きっと、「懐かしいな」と思うものがあるはずです。

私にとっては、それが仙台七夕なのかもしれません。

SNSに流れてきた一枚の写真を見て、

「仙台、帰りたいな」

と思える。

それは、仙台で過ごした時間があるからです。

そして、今の子どもたちにも、そんな時間を残してあげたい。

10年後、20年後。

進学や就職で地元を離れたとしても、

「久しぶりに帰ってみようかな」

と思える。

「昔通っていた高校、まだあるかな」

「今年もお祭りやってるかな」

そんなふうに思える。

「帰りたい」と思える場所があることは、当たり前ではありません。

子どもの頃に過ごした時間。

学校での思い出。

地域の人とのつながり。

そこでしかできなかった経験。

そして、高校で過ごした3年間。

そうしたものが少しずつ積み重なって、いつか「ふるさと」になります。

だから、地域の教育を考えることは、子どもたちの勉強を支えるだけではありません。

子どもたちが「ここで育ってよかった」と思える時間をつくること。

そしていつか、

「ただいま」と言いたくなる場所を残すこと。

それも、地域の教育ができる大切なことなのだと思います。

今年の夏。

あなたが帰りたくなる「地元」は、どんな場所ですか?

参考文献・引用資料

文部科学省「高等学校教育」

文部科学省「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」

文部科学省「地域提案型の学校を核とした地域魅力化事業」

文部科学省「高校を核とした地域活性化―島根県立隠岐島前高等学校―」